知らなかった妊婦の事実

親戚のお姉様、職場の先輩、。

妊婦さんはこれまでも見てきたし、何となく知ってるつもりでいたけど

 

知らなかったよ、こんなにツライなんて!

 

週数を重ねるにつれ、妊娠を耐えられた諸先輩方への尊敬がどんどん高まった。

自分がそうなるまで妊婦の辛さはお腹重い、暑い、つわりなるものがしんどいくらいまでしか想像していなかった。

本当に何もわかってなかったと思う。

むしろ何で世の中の妊婦さんは平気そうに見えたのか。

精神的にも肉体的にもしんどかった。なんで私は男に生まれなかったのだろう。

 

私はつわりがひどくなく、胃の調子が悪い時の気持ち悪さ程度で済んだラッキーな側だったが、半数の妊婦はこれにゲロゲロのつわりが加わるのかと思うとぞっとする。

 

大なり小なり辛かったのは次のこと。

○肉体面

・睡眠不足

・妊娠後期の息ぎれ、動悸

・妊娠後期の胎動

・むくみ

 

○精神面

・キャリアが途切れることへの不安

・明らかに能力が低下している自分への苛立ち

・生活への制限とストレス

・変化していく身体への戸惑い

 

まず肉体面から。

先述した通り、つわりが軽かったのは本当にラッキーだった。

お腹が大きくなるのもゆっくりで、妊娠中期くらいまでは妊娠していることに気付がない人が多かったほど。お腹も重たくないし、肉体的には全然平気だった。

ただ、妊娠初期あたりから悩まされたのが睡眠不足。

これまで同様の22時就寝、6時起床の8時間睡眠。でも明らかに眠りが浅い。ちょっとした物音で夜中に何度も起きる。

仰向けで眠れなくなった妊娠中期〜後期は寝返りが打てず、さらに眠りが浅くなった。

日中は仕事なので当然昼寝などできず。

車での通勤中に眠気を感じたことも何度もあった。

睡眠不足で仕事のパフォーマンスが下がっているのが自分でもわかり、悔しかった。

 

加えて息切れ。

妊娠後期に入ると日増しに目に見えてお腹が大きくなった。

それに心肺が押されたのか常に息苦しい。

加えて赤ちゃんに養分を送るために血流量が増えるらしいが、その分血液が薄まっているらしい。

普通の呼吸では酸素が入ってくる感じがしない。

同時に新型コロナが流行。社内、スーパー、どこでもマスク着用が求められる。

ずっと酸欠。マスクを外していてもしんどいのに。心臓が頑張ってるのもわかるけど、追いついていない。

 

そして嬉しいはずの胎動も強くなっていく。

ドラマとかで見ていた、ぽこっ…「あ、動いた!」みたいな生易しいものではなくなる。

ぼこっ…ぼこぼこっ!ぐにゅんぐにゅん!ぐいーん!

腹の中でエイリアンが蠢いている。そんな感じ。

突如蹴られて私の体があらぬ方向に不随意に動く。お腹の皮が無理やり引き延ばされる。

真面目な会議をしていても、考え事をしようとしていてもお腹の子は我関せず(まぁ、実際に関係ないよね。)

事前に修行を積んでいないと集中するのは至難の技。

赤ちゃんの足の形に腹が浮き出てくるというのはガチ。

 

最後は浮腫。

妊娠後期は大きくなったお腹で血管が圧迫されるとかで足の甲から太腿までパンパン。

足首はもちろん消滅。一晩足を上げて寝ても戻りきらないから毎日蓄積されていくような気がした。

歩いたりストレッチしたりしてみたけれど焼石に水。やらないよりはマシ程度。

ルナルナベビーの投稿とか見ているともっと酷い人もいるみたい。上には上がいる。

 

胎動と浮腫に関しては産んだ直後から楽になって一安心。

 

続いて精神面。

まずはキャリアへの不安。

産前産後で14週間、さらに当然のように育休があって1年近く穴が空く。

私がやっていた業務は全部引継ぐことになる。

引継ぎをお願いする職場の面々に負担がいく申し訳なさ。

一方で自分がいなくても回るようになる、自分の存在がお邪魔で不要になる感覚。

やりたかったプロジェクトを諦める悔しさ。

復職後できても子どもの世話で元のように働くのは難しいだろう。

自分が上司なら、2年自分の元でバリバリはたらいた非子育て社員と1年産育休でおらず、その後も休みや早退をする子育て社員とであれば、それぞれの事情はわかりつつも働いてくれた非子育て社員を先に昇進などで報いる。

子育ては私の人生に幸せな日々をもたらしてくれるだろうが、目に見える具体的な達成報酬はない。

産育休から戻ったときに自分の居場所はあるのか、目指せるものはあるのか。産休入りが近づくにつれ不安が高まった。

 

難しい問題だが、男も女も同じ期間ずつ休業したり時短勤務やフレックスで働けるようになれば、つまり、男女のブランク期間が同じくらいになれば、もう少し不安は和らぐのではないかと思う。

子を持たない、持てない夫婦や単身者の選択もあるのでマルッと解決にはならないのだが、ブランクが起きる社員の割合が増えれば、この後ろめたさもマシになるのではないか。

 

2つ目は明らかに能力が低下している自分への苛立ち。

前述の通り睡眠不足が重なっていたからなのか、妊娠によるホルモンの変化のせいなのか、酒は飲んでいないはずなのに頭が冴えない。

頭にうっすらモヤがかかったような状態だった。

これが他人から見て分かるレベルだったのかはわからないが、自分としては集中力の低下や思考力の低下を感じた。

自分で自分が歯痒く、やるせなかった。

 

3つ目は生活への制限とストレス。

まず運動が制限される。

お腹に衝撃がいくような激しい運動は避けるべし。

気分転換と健康維持のためのジョギングは自粛し、ひたすらウォーキング。

同じ距離を行くのに2倍の時間がかかる。遅刻気味でも走れないから電車で出張の時には早めに家を出るようになった。

 

そしてアルコールは禁忌。

妊娠するまでは週に3,4日は呑んでいた。

酒と、それに食べ物を合わせるのが楽しみだった。刺身があれば日本酒、チーズや生ハムとワイン、。ハイボール。折角気に入った銘柄が見つかった缶酎ハイ…。

(産後も授乳期間は呑めないので、未練たらたらである。)

 

加えて他にも注意すべき飲食物がある。

私が好きなもので言うとコーヒー、生ハム、チーズ(非加熱)、刺身(生魚)、卵かけご飯(生卵)、うなぎ。

そう、卵かけご飯も避けるべしらしい。

生卵からの、かなり確率の低い、サルモネラ菌感染リスクを考慮して避けるべしとされている。

何を隠そう私の大好物。卵のある日は毎朝食べていた。

 

ストレス解消法が動く、食べる、呑むだった私には大打撃。

音痴なのでカラオケは嫌い。貧乏性すぎて買い物は逆にストレス。泣くとスッキリするのだけど、泣いた姿を見ると旦那が動揺するので憚られる。

 

他方、旦那は一切制限無し。刺身、生ハム、チーズといったメインになる食材こそ(私が)買ってこないと食卓に登らないので食べていなかったけど、酒類OK生卵OK。お菓子を食べすぎてもOK。赤ちゃんへの影響を考慮する必要0。すっっっごく羨ましかった。

コロナの時代、オンライン飲み会が流行り出した頃の旦那は夜遅くまでリビングで楽しそうに飲み会をしては二日酔いになっていた。

酒臭い息を吹きかけてくるんじゃねぇよ、をもう少しマイルドにお伝えしたこともある。

 

ある日、生卵が良くないことを知ってしまった旦那から「なんで生卵くらいやめられないの」と怒った口調で言われて泣いた。

睡眠不足とホルモンバランスと仕事や生活へのストレスでメンタルが弱っていたのか涙が止まらなかった。

生卵くらいじゃないんだよ。我慢していたのは卵だけじゃない。いっぱい、いっぱい、我慢して、その中での卵かけご飯なのに。

辛うじて答えられたのは「じゃあ、あなたは何を我慢しているの?」だった。

売り言葉に買い言葉だったのか、旦那は酒を断つと言ったので溜飲が下がったが、直後に(一番好きな)ビールだけ断つに修正していてがっくりした。

確かに旦那まで好きなものを我慢して辛くなる必要はないけど、酒類全般好きなのにビールだけ断つって意味なくないか?

 

この卵かけご飯事件は一生忘れない気がする。

もし妊娠中の奥様をもつ旦那さんがいたら「なんで辞められないの」の代わりにこう言ってほしい。

「君ばかりいっぱい我慢して辛いけど、やっぱり生卵でアタるリスクは0じゃないから、これからは加熱して食べてみたら?」

別に旦那まで大好物を我慢しろよ、とは妻は思ってないのである。ただ、我慢していることに気づいて、目の前で食べないとか気遣うといった配慮をしてほしい。

 

4つ目は変化していく身体への戸惑い。

妊娠週数を重ねるにつれて望むと望まないとに限らず身体は順調に変化していく。

腹は徐々に迫り出し、折角割れる一歩手前まで来ていた腹筋はあっという間に見る影がなくなった。

乳房も発達し、これまで付けていた可愛らしい下着では収納しきれない。

乳輪もいつの間にか黒く大きく。

臨月にかけて骨盤も開いていって尻も大きく。

風呂場の鏡に映った私は、さながらメスゴリラ。

顔が残念な分がんばって培ってきたプロポーション(笑)はどこへやら。

出産、育児に対して身体だけは一直線に変わって行く。心はどうやって母になれば良いのかと置いてけぼりのまま。

刻々と変わる身体について行けず戸惑った。

 

産後の今も思う。妊婦が辛いのは見た目以上。

産後の今は思う。産後はさらに辛い。

 

出産を経験した全ての先輩方を尊敬する。

これから妊娠した人がいれば、その人が妊娠前と同様のパフォーマンスができるわけない。たいへんだね。と声をかけたい。

 

ああ、私は男に生まれたかった。